上場企業の四半期報告は必要なのか否かについて
仕組みは思考を制限する。説明責任はどこまで必要なのか。
毎日購読しているForbesのニュースレターで上場企業の創業者として興味深い内容のものがありました。
「米国証券取引委員会(SEC)が、上場企業による決算報告を年2回のみにすることを認める規則変更を提案した。」
これが適用されれば、上場企業は現状「四半期決算(年4回)」が義務付けられていますが、「半期決算(年2回)」にすることを選べるようになるとのことです。これは、トランプ政権が進める規制緩和の一環だそうです。
原文は以下です。
Public companies could soon have the flexibility to only report earnings twice a year. And while President Donald Trump is a fan of the idea, corporate leaders are mixed.
A proposed rule change from the Securities and Exchange Commission would allow public companies to file earnings reports semiannually, and is currently in the agency’s public comment phase for the next 30 to 60 days.
Warren Buffett and JPMorgan CEO Jamie Dimon argued in a 2018 op-ed in The Wall Street Journal that quarterly reports lead to an “unhealthy focus on short-term profits.” But Citadel founder Ken Griffin told CNBC last year that “you risk losing some level of accountability,” if there’s a longer period between reporting.
とても気になったので、より詳細が書かれている元記事も読んでみました。
今回の規則変更案に対して賛成派と反対派の主張がそれぞれ書かれていたので、簡単にまとめてみました。
導入の目的とメリット(賛成派)
脱・短期志向: 短期的な数字に追われる「四半期資本主義」を是正し、長期的な戦略・投資に集中できる環境を作る。
コスト削減: 報告書作成にかかる膨大な事務的負担や管理コストを軽減する。
IPOの活性化: 上場維持コストを下げることで、新規上場(IPO)を促進する。
JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOや、かの有名な投資家のウォーレン・バフェット氏も賛成派とのこと。
懸念点とデメリット(反対派)
透明性の低下: 投資家が情報を得る頻度が減り、経営の透明性や市場の公平性が損なわれる恐れがある。
説明責任の欠如: 報告の間隔が空くことで、経営陣への監視が緩み、アカウンタビリティ(説明責任)が不十分になるリスクがある。
「そもそも月次決算を行なっているはずなのに、情報を伏せておく理由がない」という意見もありました。
補足ポイント
重要なポイントとしては、今回の提案は「完全な義務化ではない」ということで、企業が自社のビジネスモデルや投資家の期待に合わせて四半期か半期かを「選択」できるということです。
また、こちらはまだ決定事項ではなく、一般からの意見を募るパブリックコメント段階にあります。
ここからは、本件に対する私自身の意見を述べていきます。
私は賛成派です。
起業家であり上場企業の創業者である自分の意見としては、この提案は大賛成です。
理由としては、「企業は中長期的な成長を目指すべきである」「そのためにそれを目指しやすい環境を創るべきである」と考えているからです。
実際に社内会議などを観察していても、「四半期決算」があることでどうしても短期的な論点が生まれてしまいます。人間は感情のある生き物なので、「外に出る情報」に対してはとてもセンシティブになります。私としては、もっと重要な論点にフォーカスすべきで、そのためには”やることを削る必要がある”と強く思っています。
人間の思考時間は、有限です。
そして、人と人が膝を突き合わせて行う議論の時間も、有限です。
この有限な「思考」と「議論」の時間を、もっと本質的で重要なことに使うべきだと思うのです。
分析や管理はAIに任せて、人間は本質に注力すべき
もう一つの理由としては、昨今の急激なAIの進化が挙げられます。
反対意見の中に、「情報更新の頻度」と「経営陣への監視が緩む可能性」という論点がありました。
当然上場企業であれば月次で予実管理を行なっているので、AIを用いることで以前よりもかなりの精度と頻度で分析・改善をすることができるようになってきました。
また、監視的な観点でも、まさにAIに任せるべき部分だと感じています。「人間が人間を監視する」という構造自体がそもそも疑心暗鬼を招き、組織に溝を生み出します。だからこそ、感情を持たないAIが細かい部分をチェックすることでよりスムーズな組織運営ができるはずです。
私自身、「人には言われたくないけど、AIになら言われてもいい。」といった経験をこれまで何度もしてきました。これこそがまさに、AIの革新的な要素だとすら感じています。
要するに、
「人力よりも詳細な分析」と「性悪説的な監視」はAIに任せて、
人間はもっと中長期的で本質的なことに思考と議論の時間を使うべき。
これが私の主張です。
ちなみに、日本では2024年から「四半期報告書」が廃止されましたが、依然として「四半期決算短信」という制度は残っています。
もちろん、自身が起業家であり創業者であるという立場からくるポジショントークであることは間違いありませんが、私は今回のSECの提案が成立して、その流れが日本にも来るといいなと思っています。
今後もSubstackにて、米国のスタートアップ・AI関連の記事を読んで考えたことを発信していきますので、良かったら購読してもらえると嬉しいです。



